晩秋・他/Lucy
二月
飛びたったように見えたのは
薄雲漂う空のなか
ゆっくりと上昇し夕陽の手前でゆるやかに
向きを変える時
透き通る輪郭をひからせ
気流に細い首を延べ
春に背を向けて渡る
何百羽もの透明な鳥の群れ
雲はしだいに夕陽を遮り
しずかに羽毛が降り落ちてくる
断片
かけらのまま
ただわたしとして完結する孤独
幼年
みんながうまく避ける小石に
きまってつまずき
あのこが鬼だと影踏み鬼は夜まで続く
ゆうらり駆け出すはだしのかかとにふいと背いて
踏まれた影は
いびつにちぎれていったので
あのこはだんだん口べたになる
新月
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