晩秋・他/
Lucy
新月の夕闇せまる春まぢか
村はずれの川へたどり着き
橋もないところを
だまって目を開けて跳ぶ
ひっそりと弧を描き血の乾かない
ひざの擦り傷の淋しいかたち
を
夜の背中に爪たて
くっきりと
せめて刻みつけたくて
空
カモメもあれほど高く飛ぶことがある
いっぱいに羽をひろげ静止したまま滑空する
深く透き通る水の奥
はるかな雲と
水面近くに漂う雲とが離れたままで交差する
小さく
遠く
カモメは
自分が魚だった日のことを思い出している
戻る
編
削
Point
(14)