晩秋・他/Lucy
 

   晩秋

すでにざっくりと強剪定された太い枝の切り口を
寒空にさらす街路樹
いつも
心の底ではあてどなく遠いあしたを待ち侘びていた


   冬の雲

空一面に
狼の顔があらわれる
吹雪の底で
一晩中吠える

生温かく知覚される
凍死寸前のいびつな眠りを
打ちすえる


   残照

生まれて初めて海に沈む夕陽を見た夏
恋をした
夕日が沈みきってからも
暗い海へ
雲が照り返し続ける色を
胸に焼き付け
あれから
あなたを追いかけても
探し当てても
抱き締めても
海に沈んでしまった夕陽は
二度と
姿をあらわさない


 
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