雪解け/ブライアン
の家は同国の西側よりも、他国の南側の方へのなじみが深いようだった。彼女の父は西側の地域のことをあまり語らなかったが、南側のアメリカ合衆国側の風習をよく話した。
ある年の五月、彼女の家族は高玉芝居を見に行った。父は高玉芝居を見ながら涙を流しているようだった。昔は、と彼は話し出した。昔は、父も友人たちと一緒に芝居をしていたと言った。今はアメリカ合衆国側にある公民館を借りて、長い冬の間、毎夜練習をして、練習が終わると酒を飲んで多くの話をした、と言った。冬は雪が積もるから、働きたくても働けなかったんだ、と父は言った。
高玉芝居を見終え、川に架かる橋を渡っていた。野鳥の群れが南側へ飛んでいくのが見えた。
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