雪解け/ブライアン
 
した。付き合わないなら、最初からはっきりしろよ、むっつりが、と彼女は聞こえるように言った。彼女の声が、耳に届く。働かざる者、食うべからずだよ、と彼女は言った。その声は怒りに満ちていた。
 交差点付近に群れていた客引きたちは、彼女と言葉を交わす。二十四時間営業の書店の光が歩道に照らされている。頭上には高速道路があった。車が走り続けていた。大通りには、トラックがいくつも路肩に停められている。働かざる者、食うべからず、だ、と思った。彼女は煙草に火をつけ、ポケットに忍ばせていた懐炉を取り出すだろう。暖を取りながら、私たちマッチ売りの少女みたいだ、と思う。

 一九六七年、ソヴィエト連邦側の住民は、ア
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