雪解け/ブライアン
、アマチュア無線でチェコスロバキアの事件を知った。彼女の両親は深夜に今の明かりをつけ、ラジオから流れてくるニュースに目を瞑り、耳を傾けていた。彼女の兄がトイレに目が覚めたとき、父の悲壮な顔を幽霊だと勘違いして大騒ぎしたことがあった。その時父は、恐れる兄の表情を見て、幽霊のふりをして家の外へ飛び出したらしかった。高等学校を卒業するまで、兄は父の生霊がラジオを聞いていると信じていた。
彼女の故郷の家の西には大きな川が流れている。大戦後、国を隔てていたのが国道一一三号線だったが、近世以前の境界線はその川だった。それゆえ、ソヴィエト連邦領とはいえ、川を隔てた西側の地域には微妙な文化圏の違いがあった。メ
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