あずきの恋人 (連載?)/たま
 

 何がなんだかわからなかったけれど、わたしは自転車を押して、鈴木さんのあとをついて行った。鈴木さんの家は、猫又木山団地の六棟の一階にあった。
「さぁ、入ってちょうだい。ちょっと暑いけど、がまんしてね。」
 アー、アー……。
 イチローはわたしのことが気になるようすだった。
 玄関のちいさな表札には、鈴木って、黒いマジックで書いてあった。せまい玄関の奥には、あかるい台所があって、六畳ほどのとなりの部屋とつながっていた。台所の窓の向こうにはベランダがあって、洗濯物が干してあった。
「さぁ、ここへすわって……。」
 台所にはちいさなテーブルがあって、椅子がふたつ、向き合ってならんでいる。わ
[次のページ]
戻る   Point(13)