あずきの恋人 (連載?)/たま
何がなんだかわからなかったけれど、わたしは自転車を押して、鈴木さんのあとをついて行った。鈴木さんの家は、猫又木山団地の六棟の一階にあった。
「さぁ、入ってちょうだい。ちょっと暑いけど、がまんしてね。」
アー、アー……。
イチローはわたしのことが気になるようすだった。
玄関のちいさな表札には、鈴木って、黒いマジックで書いてあった。せまい玄関の奥には、あかるい台所があって、六畳ほどのとなりの部屋とつながっていた。台所の窓の向こうにはベランダがあって、洗濯物が干してあった。
「さぁ、ここへすわって……。」
台所にはちいさなテーブルがあって、椅子がふたつ、向き合ってならんでいる。わ
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