マリアと犬の夜/TAT
化粧が落ちるのも気にせずに、マリアは顔をべろべろと豆柴の子犬に舐めさせた。柔らかい肉球をぎゅっとつねり、背中に爪を立てて未曾有の恐怖に慄かせた。キャンキャンと吠える若いオスにごめんごめんと告げてマリアは輪ゴムを口に咥えて長い髪を後ろで結う。魔法でこてんと横倒しにして白い腹を祭壇に奉る。あたたかいやわらかな鞠のように脈を打つ豆柴のお腹に冷感症の骨ばった指を走らせた。
犬が切なそうに鳴いた。
身を預けた降伏の姿勢の下肢。下肢の中央に野草の芽のように若いしなやかな茎。魔が差したマリーは親指と人差し指と中指を唇にあてがい、つばをグリスのように粘らせた。ぬるぬると滑る指を神様のような速さで豆柴のペニ
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