リバース/山中 烏流
 






あの子は大人になってしまった


彼女は虹のたもとで
まだ
じょうろを握り締めている



***



鈍色のカーテンを引いて
人々は眠りについた

張り詰める風もなく、ただ澄み切った空気の中で
たくさんの忘れられたものが
街にひしめいた



あの子は大人になってしまった


彼は出窓から見上げる銀河鉄道を
必死に指でなぞった



***



ことばは
どこかに去ってしまって
いつしか
きみの
名前すら
失くしてしまって

ほとんどのものを
殺しても
殺しても
戻らないそれを

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