午前八時三十五分、恋に落ちて(掌編小説)/そらの珊瑚
 
線路の上をただひたすらに走る毎日は、それが仕事とはいえ時につまらないものに見えてきます。

そんな時でした。あなたに出会ったのは。

午前八時三十五分、あなたは反対車線からやってきます。
マリンブルーを身に纏い、あたかもそれは湘南の海を、潮風を、想像させていかにも爽やかな面持ちです。

私は京浜東北線、あなたは横須賀線。

ふたりが近づくのはほんのひとときですが、その瞬間窓硝子がしびれたようにびりりといいました。
ああ、恋って。こんなに心震えるものかと思ったのでした。

私は生来臆病なたちなので、道を踏み外してあなたと共に生きていくことなど、これからも到底できないでしょうが
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