雨、犬、つむじ、台所のこと/はるな
に渦巻く産毛を撫でさせてもらいながら、彼の子どもも、こういう風に撫でられたのかと思う。母親と父親のあいだで、こういう風に獣みたいな純真さでときどき笑っていたのか。彼は笑っていただろうか。すこし疲れたみたいないつも見る笑顔じゃなくて、小さな獣と似た笑顔で笑ったりしただろうか。あの人は幸せだと言っていた。子どもを抱いているときは幸せだ、と。春菜を抱いているときよりも幸せだと。
母からは宝籤の写真が毎日のように送られてくる。
黒くすべらかな毛、かしこそうなまぶた、おどろくような速さでたくましく長くなる後ろ足。宝籤はお腹の毛が白い若い犬で、写真にはめったにうつらないけれど、尻尾の先のほんの数本の毛
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