インド人 吉田  (後)/salco
 
なくなって久しい。億劫な齢になり、娘と息子が各々の巣
でかわいい孫達の為に引き継いでもいる。つつがなく霜降りのふた親はプレ
ゼントを携え、一夜を招かれる客人となった。
 今、窓辺には捨てそびれたキティちゃんやらミニカーやらを並べている。
たまに埃を払われるだけの、こうして思い出ばかりが堆積して行く。しかし
それこそは不確かな人生の確かな血肉であろう。塵埃とは違うのだ。

 アッサンターリはガードレールに腰かける。
 十分も歩くと息切れがするのだ。長年の糖尿病が腎臓から心筋に来て、昨
年末手術をした。食事制限で八キロほど落としたが、膝も痛い。息子に託し
た会社に顔を出すのもやめ、
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