インド人 吉田  (前)/salco
 
た父には、一族の末端までが余禄を期
待していた。その三男が稼ぎ出す通貨はアメリカドルより強いらしい。放
逐してしまったら倅の代が関与できないではないか。日本車と「ウォーク
マン」が世界を席巻していた頃である。


 ところが始祖の生業など遡る必要性のない恵子サンは、両親を含めて三
代前までしか知らない。
 父方は古い順に農家・兼業農家・公務員、母方は商家・兼業商家・サラ
リーマンといった具合で、双方の実家に問合わせてみても、五代前の親戚
にさえ僧侶のソの字、尼僧のニの字も見出せない。神職のシの字、神父や
牧師も、ラビのラの字、ムッラーのムの字は言を待たない。
 父方は浄土真
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