インド人 吉田 (前)/salco
るものとて持たぬ遠縁の叔父
が殺意まで仄めかすわけだった。
この「不浄」観念の為にこそ姉も、女と生まれたがゆえに結婚には余計
な苦労を強いられたではないか。同位ブラフミンの独身男が見つからず、
あわや行き遅れの笑い者になるところだった挙げ句、心も貧しい再婚男と
の生活に今も苦衷が絶えない。彼女の失望や忍耐は愛の思い出が作るので
はなく、ただただ身分の維持と出戻り地獄の恐怖ゆえだ。
と、このように高等教育のどこかで邪教の思想にかぶれてしまった変人
が翻意せぬと理解するや、異教徒でも司祭の家系だったら許してやると高
圧的に譲歩して来た。
ムンバイで州政府高官に登りつめた父
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