光冨郁也詩集『バード・シリーズ』あとがき/葉leaf
3.+孤独+写像+
女の腕の中、乳房に頭をあずけ、浴室に置き忘れた眼鏡を気にしながら、わたしは子どものように、身をまかす。彼女のひれがわたしの足にあたり、彼女の緑の、長い髪が、わたしの首筋にからまる。海の底、女に抱かれた、はだかのわたしに、魚が、群がる、静かな青。女は、わたしの二の腕に唇をあて、下をはわせ、歯をたてる。のぞきこむ彼女の目から、わたしは視線をそらす。(『サイレント・ブルー』より)
『サイレント・ブルー』は後の『バード・シリーズ』を予感させる作品である。想像された動物的な女との淡白な交渉。孤独な男が孤独な女を生み出し、その女とのかかわりで一層孤独を深めていく。
光冨の
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