光冨郁也詩集『バード・シリーズ』あとがき/葉leaf
 
冨の詩には三種類の孤独が出てくる。主体である男の孤独と、想像された幻想的な女の孤独、そして死んだ父親の孤独である。
 主体である男は他人との無垢な連帯を喪失し、たとえ他人と交渉することがあっても、その交渉の甘い架線の周囲には、常に絶対零度の真空が限りなく広がっていて、その甘い架線をすぐに切断する。だから引用部において男は女の視線を受けたときに「視線をそら」さないではいられないのだ。裏切られることは目に見えているからだ。男の孤独は人間的な孤独である。
 想像された幻想的な女――これはハーピーだったりマーメイドだったり精霊だったりする――はたいてい動物的であり、他の者と、人間的な観念と情緒の伴った
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