リルケから若き中島敦への手紙/すみたに
 
に一頭の獣を飼っていたといったが、
 その獣は確かに同じ意志するものであった。
 だが獅子と虎は決定的に違う。
 獅子は愛せばこそ、崖から突き落とす存在である。
 まるでサバンナの赤岩剥きだした世界に住む獣と、
 時には悠々と沐浴さえできる過剰なジャングルに住む獣の決定的な違いである。
 また、誰もがなんらかの獣を飼っていることは言うまでもないだろう。

 そして李徴は愚人ではなかった――なかったからこそ、周囲の人間への眼差しを――
 彼は自己弁護をするように優しすぎたから――同情的にしてしまう。
 だから彼は自尊心をもつことにこそ、本当は人一倍の恐れを抱いていた。
 臆病と
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