リルケから若き中島敦への手紙/すみたに
 
小説の大胆さと強靭さがある。
 ――だから小説はまたすべて物語を孕んでいる以上、
   メタ的でアレゴリーから逃れられない、
   前者は諏訪哲史も『アサッテの人』で述べており、
   後者はやはりボルヘスが『異端審問』で述べているところだが――
 つまり「汝自身を知れ」というソクラテスに告げられたデルフォイの神託は、
 小説の始まりでもあるのだ。
 そしてプラトンはソクラテスに哲学的対話をとうとうと語らせた。
 これは小説で会ったのだ。
 これははじめいった、読書における対話との対関係になっている。

 そして話は『山月記』へと戻る。
 作者の中島敦は虎になった李徴に、作
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