リルケから若き中島敦への手紙/すみたに
 
、作中で述懐させている。
 「肥大した臆病な自尊心」ともいうべきものをもっており、
 それが我が身を虎へと変じさせたのだ、と。
 虎となってようやく自己を知ったからこそ、
 この小説は虎になった李徴が表れるところが機縁となっている。
 しかしながら、李徴=虎は、
 「肥大した臆病な自尊心」というアレゴリーで終始した存在なのだろうか。
 一匹行動する虎になり孤独にうちしずむということが、
 世間から疎外され、ニンゲンとしての自己疎外を引き起こし即ち虎化
 ――つまりポスターの自分こそが自分であると思い込んだが故の狂気――
 となって理性からの遁走を果たした、というように理解されて
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