リルケから若き中島敦への手紙/すみたに
 
意志は軌道を外れて虚無なる宇宙へと飛び始めようとしている。
 そして崖際での遠吠え――その我在りの叫びは、月まで届いてくれるだろうか。
 が、その我は、その獰猛で力に満ちた声で自覚されるように、虎であるのだ。
 まさに、お前=俺は虎なんだ、と、自己宣告する叫びなのだ。
 彼は悲劇的な形で自己を、確固たる自己をとうとう手に入れたのだ。
 

「もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないか、自分自身に告白してください。何よりもまず、あなたの最もしずかな時刻に、自分自身に尋ねてごらんなさい。私は書かなければならないかと。」

 彼の詩はうまかった、けれど何か足りない、と
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