本と神田とジジイ/ドクダミ五十号
。げっぷをしたらカレーの匂いがするほどに。うろうろしたら
それはあった。瞬間に「コレは買わねば」だった。古書店のジジイはびた一文まけるかの
気配がムンムン。「にいちゃん、欲しいのかそれ」睨めつける視線は頭のてっぺんから少し
すり減った靴の先端まで。「にいちゃん、あんた貧乏だな」余計なお世話だ。
店主は店の奥に。戻ってわたくしに付き出したのは、”割線切符”正確な名称は知らない。
「知識は安く無い。でもな、ちょっとづつでお前のものだ」月に千円を十二回。
「さて、一枚目切るか?」出したよ裸の札を。財布?いつもズボンのポッケさ。皺くちゃな
千円を伸ばしてジジイはミシン目を押さえて一枚目を切り
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