本と神田とジジイ/ドクダミ五十号
 
切り取り、それを摘んで言う。
「これで決まりだな」新聞紙で出来た袋にその本を入れてわたくしに。
「にいちゃん、良い買い物だと思うよ」単にわたくしは幼い記憶の充填目的で、知識欲
などでは無いのだが、店主は勘違いしたらしい。その後完全に支払いは済ませた。
その間、色々と得た。本から。飢餓とそれを乗り越える知恵と手間。彼岸花さえ食とする
切なさ。木の実さえも主食であった事実。今は手元に無い。その本だ。
実に惜しい。過去と現在を繋ぐ良書であった。
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