本と神田とジジイ/ドクダミ五十号
 
木の実です。鉄床と金槌もみつけました。
胡桃の割れたのも発見しました。胡桃と言っても頭に”鬼”。そんなものを備蓄する。
人の弛まぬ生存本能に驚かぬわけがありますでしょうか? 「したみ拾い」米は貴重
だったに違いありません。五つに満たぬわたくしにも充分理解出来る。
山に分け入り、木の実を拾い、なんとか命をつなぐ。石臼も発見しました。
「ああこれで」粉にしたに違いありません。試しに残っていた粉を口に運ぶと、とんでもなく
渋いのです。「こんなもので・・」命は切ないものだと、幼心にても思うに充分でした。
さてと、成人したわたくしが、神田界隈を歩いている。何をしに?
目的などはありません。げ
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