続続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
田に似ています。生ぬるい生活や雅な叙情などには回収されず、意志と自律によって虚構の厳しい世界を作り出したという意味では、吉田と初期田村はかなり似ているといえるでしょう。ですが、だからこそ田村は吉田を否定する必要があったのです。
 次に、西脇の作品を見てみましょう。



南風は柔い女神をもたらした。
青銅をぬらした、噴水をぬらした、
ツバメの羽と黄金の毛をぬらした、
潮をぬらし、砂をぬらし、魚をぬらした。
静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした、
この静かな柔い女神の行列が
私の舌をぬらした。

 この作品は、西脇の第一詩集『Ambarvalia』に収録されています。193
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