続続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
現実の役に立ったりします。芸術における美もその一つであり、芸術がそれ自身を目的とするとき、そこに美が生まれやすく、そしてその効用は外側へと波及していきます。
田村は、詩においても詩論においても「遊び」のない吉田を嫌った。それは自身の初期の創作の超克でもあるでしょう。一方で、詩においても詩論においても「遊び」に満ちている西脇を好んだ。
さて、ここで冒頭に掲げた「木」を読み返してみましょう。「木は黙っているから好きだ/木は歩いたり走ったりしないから好きだ/木は愛とか正義とかわめかないから好きだ」。このあたりの思想はまさに軽妙洒脱であり、話すことや移動することの生産性の拒絶、大義名分へと自己を律
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