遺書にはならない足跡 2/セグメント
 
いる恋人のことが分からず、私は聞いた。
「あなた、だあれ」と。
 それは、まるで子供のそれであった。恋人に対して「誰か?」と尋ねたことは「彼女」の時もあったのだが、その時は非常に攻撃的であったと恋人は言っていた。しかし、この時は、本当に子供が現在を把握しようとして問い掛けているものであって、敵意や害意はなかったと、やはり恋人は言っている。
 私は、初めて見る人を見るような目で恋人を見たような記憶がある。頭の奥底では分かっている。知っている人だ、私の恋人だ、と。だが、表面化している「私」が彼を恋人と認識してくれていない。言葉にするとそういう状況だ。
 また、この際、更に今までにない状況が起こ
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