遺書にはならない足跡 2/セグメント
 
起こった。

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 過呼吸が治まった後、自分の部屋が、まるで自分の部屋ではないように感じてしまったのだ。どう言ったらいいのだろう。知らない場所に、ぽん、と自分が放り込まれた感じとでも言うのだろうか。空間の認識が出来ていない状態、とでも言うのだろうか。とにかく、見慣れたはずの自室がそうでないものとして目に映り、頭で感じ取ってしまう。そういう状態だった。
 実家にいる頃から考えて約十年程、使っているブラウン管のテレビも、急にそこに現れたように思えてしまう。以前の家にいる頃から使っている濃い青色のカーテンも、何故、青いのか考えてしまう。引っ越しをしてから半年以上過ぎているから、ここに来て新
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