安酒/深水遊脚
 
 安物の意味合いは、もうすっかり変わってしまっている。それは必ずしも粗悪品を意味しない。いろいろ限界があるなかでも本気でいいものを作ろうとしなければ誰も振り向いてくれない。ましてやお金を払おうとなんてそう簡単にしてくれない。生産者として何かを差し出す厳しさを知っているから、消費者としても何かを買うときは本気の度合いを吟味する。持っているお金が限られるのに好き好んでいい加減と分かっているものに浪費したりしない。手に届くもののなかから、本気で好きになれるものを真剣に選ぶ。誰かが手にする、傍目から見た安物は、そんな抜き差しならない真剣な選択の結果手にしたものかもしれない。
 話題にするにはもう時が経っ
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