夢を描く/MOJO
 
ぽつんと一棟だけ在る。中に入り、階段を最上階まで登ると、そこは何故か病室になっていて、私が常日ごろから死んでほしいと願う女がベッドに横たわっていた。
 ベッドの脇の椅子に座り、私は女と言葉を交わす。釣師が海底に沈めた仕掛けを探るように、慎重に言葉を選びながら、私は女を観察する。女の青くむくんだ顔を見て、この女はもうすぐ死ぬと確信する。私は嬉しくて堪らない〉

 あるいは、こんな風に、

〈私は、夜の漁港をさまよい歩いている。船着場には、数えきれぬほどの漁船が停泊し、夜の波に揺られ、互いに擦れあい、軋んだ音を発している。青魚の臓物のにおいが鼻につくが、漁港なのだからしかたがない。私は夜釣を
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