『Pamela, or Virtue Reward』/森永裕爾
 
たPamelaの結婚とは、社会体制から外れた生き方をすると制裁を受けた、当時の女性たちの選択肢なき諦めであったのではなかろうか。
Pamelaと両親をつなぎとめる唯一の方法である手紙は、当時の女性にとっての自由の象徴であったとも考えられる。著作者であるリチャードソンは、実は父権制の継続を願ってこの小説を書いたと考えられないだろうか。ありもしない自由を追い求めるリスクよりも、強い者に従えば安定した生活が送れるのだとの示唆をしているように思えるのである。
この作品から、意思伝達の手段である手紙は、自らの生を繋ぎ止める命の綱であることがひしひしとこちらの胸に伝わってくるものがある。手紙という表現
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