『Pamela, or Virtue Reward』/森永裕爾
表現形式に登場するのは、基本的に「わたし」と「あなた」の二人称であり、「わたし」の想いを相手に伝えようとするものである。手紙に、「わたし」が全面的にフィーチャリングされている点に、自己を主張するという近代自我の目覚めを人々は感じ取り、新しい時代の息吹に拍手したのだと考えられるのである。
最初の文学になったという手紙の形式的価値は、現在のメールという100文字ほどの画面をスクロールして文章を切り取っていく作業に受け継がれている。紙を媒介とした小説は社会における意義をなくし、メール文学なるジャンルが確立するかも知れない。そうであっても変わらないのは、自己を言語によって表現するという行為である。
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