シネマレビュー「父と暮らせば」(ネタバレあります)/そらの珊瑚
 
陽ふたつぶんの温度を浴びて、泡立ち、いくつもの刺を持つということです。

それでも愛があふれた美しい映画です。
宮沢賢治の歌を口ずさむ美津江の歌声のうつくしさが胸を打ちます。
瓦礫の中に最後に咲く二輪の白い花は何を象徴しているのでしょうか?
井上ひさし氏は、そこに希望や再生の願いを込めたのではないかと思います。

美津江がずっと幸せならば、きっと父と暮らすことは二度とないでしょう。
ある意味父の亡霊を生み出したのは、紛れも無く彼女ではなかったか。
原爆で親友は亡くなり、その母親から「なんであんたは生きとるん」と責められ、父親を置き去りにして、広島から逃げてしまった自分を許せないで
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