手慰み/MOJO
 
だ。川端を読んだ。三島は、あの猟奇的な死が嫌で近づくことはなかった。太宰に酔うには、歳をとりすぎていた。

 時は過ぎ行き、私は四十歳になっていた。世はIT時代を迎え、ついに、私の部屋にもパソコンが来た。ネットサーフィンするうち、文章投稿サイトなるものに行き着いた。そこでは、作家志望と思われる若者(おそらく)たちが、思い思いの作品を投稿し、それを読んだ者たちの感想が載っていた。私は驚愕した。小説などというものは、素人が書いてもよいものなのだろうか。ああいうものは、選ばれし者の特権なのではなかろうか。ロックミュージシャンのように、特別な何かを持っていて、その代わり、世を渡ってゆくに必要な何かが欠
[次のページ]
戻る   Point(1)