真夏の雪、地蔵骨峠の夢/はるな
ろしくなり引き上げてみると、あるのはつるりと新しいプラスチックのような球体であった。
「指が。」
「なんぼでも生えてきますよ。もし必要ならね。」
はあ、そういうものですかと球体をさすっているとたしかに心なし見たことのあるような指のかたちをなしてゆく。あ、と思ったのも束の間本堂に火の手。
真っ白な雪景色の中に燃え盛るお堂の赤、それはあれだ、ついさっきまで雪を踏み踏み走っていた真っ赤な私の足によく似ていた。
「消します。」
断固とした気持で宣言した。
「消し始めるならね、最後までやらないと、帰られないからね。」
下足番は長い長いホースを手繰りながら独り言のようにつぶやく。
炎とい
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