真夏の雪、地蔵骨峠の夢/はるな
というものは思っているのよりも何倍もはげしく速い。そして熱い。じょじょにじょじょに、押されるようにして地蔵骨の峠を後退してゆく。
途中のうどん屋もみな火のなかへいってしまった。家族や夫のすがたは見えなかったから、きっと早くに気づいてどこかへ避難したのだろう。
じりじりと、そして、駅の広場前まで来てしまう。
「あっこの菓子屋のビルだけは燃してしまったらあかん。」
人々が後ろで勝手なことを言う。たしかに菓子屋は「このへんの経済潤した」「あっこができてまたちゃんとご飯食べれる」とか言われているが、月夜の晩にふやかした違法な豆を使っていることだってみんなちゃんと知っている。知ったうえで生きていくた
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