根と血、うつほ、プレーローマ/るか
 
る。


この時期以降の中上健次が取り上げていたテーマあるいはコンセプトとして、うつほ、というものがある。宇津保物語がリファレンスとされながら、うつほ=ほら、空虚、女陰、といった概念系列を問題にしていた訳である。
その、うつほ、の感覚はまさに路地の消失の結果であったろうことはきわめて見やすい訳だが、
そうした作家個人の主題論的な困難を遥かに超えて、うつほ、という現象は、2012年の現在をも深く規定している。それは吉本隆明による修辞的な現在、と明らかに並行した現象であり、
あえていうなら、ミクストリアリティ、オーギュメンテッドリアリティといったメディア環境の拡大、浮遊感や閉鎖性、ニーチェ
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