四四年の因縁/……とある蛙
エネルギーの塊のような
陰がボールを掠め盗った。
ほんの一瞬の出来事だった
足が重い 体が重い
奴らのボールまわしは早い
PKはいやだな!外したら怖いなぁ。
等と畏縮する思考
そこから逃げようと
パスする味方を探した瞬間
彼の視線の裏から
暗い四四年前の怨念が
ボールを掠めて盗った。
ほんの一瞬の出来事は
一一人全員に重く伸し掛かり
その半時前 全員が抱いていた
眩いばかりの栄光の視界を
窓硝子に垂れ落ちる
黒い粘液の雫のように
遮った
最後一五分
足が上がらない
どこへ蹴るのか分からない、
相手のボールを奪えない
相手の動きを見る
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