I'm hungry/アオゾラ誤爆
りがとう、と言って私は椅子を立った。
セルフサービスの喫茶店や食事処なんかで、恋人は必ず私の分の下げ物まで片づけてくれる。大丈夫、やっておくから、という言葉には、無駄な押し付けがましさはない。同じように、私の荷物を持ってくれるときや、車のドアを開けて私を助手席に乗せてくれるときもそうだ。いたって自然に、そうであるべきと思わせてくれるような仕草は、いつだって感動的でさえある。疲労がにじんでいる瞼すら、よくしつけられた犬のようにクレバーだ。私は髪を撫でたくなる。いとしい、といういっぱいの気持ちで。
そして私は、はっとする。自分の欲に気づくのだ。撫でたい、ふれたい、触れ合いたい。私そのものがどこ
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