紫陽花のうた/そらの珊瑚
 
今入っているものといえば、涙を拭くハンカチくらいかしら

いつのまにか、雨が止んでいる
冬の間枯れてしまったかにみえた紫陽花は
すっかり勢いづき
濃い緑の葉を繁らせ
白い蕾をつけ始めている
 
蕾は歌う
「心がさみしいと、赤くなります」
「心が、もっと、さみしいと、青くなります」
「心が、もっと、もっと、さみしいと、真珠の涙を浮かべます」

そうなんだ、紫陽花ってさみしがりやなのね
こんなに羊がいるのに
お友達にはなれないのかしら?
 
私はその真珠をそっと集めて首飾りを作った
首にかけると、長くもなく、短くもなく、
私にちょうどよい長さになった
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