紫陽花のうた/そらの珊瑚
 
った
 
紫陽花の蕾はうたう
「あなたの涙も真珠になった」
「ちょうどいい思い出になった」

そ う、わ た し も さ み し か っ た

    ◇


ふと目覚めてカップに手を伸ばす
紅茶はまだ温かい湯気を立ている

エプロンからハンカチを取り出すと
一枚の葉が滑り落ちた
拾ってみると
庭のラムズイヤーの葉がそこにあった
触り心地はまさに羊の耳
しばらく指先でその感触を楽しんでいたら
じんわりと愛おしさが伝わってくるようだった


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