つづきのない山女(やまめ)の話/月乃助
 
なら/いちど


背の毛をさかだて
牙をむき出し
少女の背負わされたものを ガツガツとかみ砕く

私は、一枚の鏡 の 狼になろうとする
うつるものはすべて 正確に把握し 投影しては、咀嚼する
ほんのわずかな 罅割れも この中ではゆるされない


/おーい/ビールはまだか


カウンターの向こうで、ポロシャツの男が
うな重をたのんでいた
メニューもさまがわりするという ことらしい


「「 ありがとう ございました


外は、休日の街
都会の中途半端な なまぬるい風が、ふいている
渓流の流れにさからう魚のように
それを肌にうけ 流れに 流されてしま
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