最終考察あさき 前夜祭 -幸せを謳う詩-/只野亜峰
 
るものですが、娘の死すら記憶の彼方へと追いやってしまうのは一抹の寂しさを禁じ得ません。幸せの価値観は人それぞれという事でしょうかね。

(5)途切れぬ糸が語るもの

――静かに舞う 緋色の糸

 さて、ロングver.に特化した考察となります。「静かに」という言葉が語られるフレーズは作中に三回ありまして、その都度で場面が入れ替わっています。引用した部分は爺と少女がキネマに興じる禍々しい姿を描いた直後に描かれる幸せな男女の姿なわけですが、素直に読めばこれは主人公である母と夫とが二人で過ごした幸せな記憶という事になるのですが、問題はその後に描かれるフレーズです。
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