【 想像の芽 】/泡沫恋歌
 
と呼んでいた

ある日「やぶれ饅頭」を買って来てと
母にお使いを頼まれて
いつもの調子で和菓子屋の店先
「やぶれ饅頭をください」と言ったら
お店のおばさんに笑われた

奥からわざわざ店主を呼んできて
もういっかい言ってみてとおばさんが
「やぶれ饅頭を……」私が言うと
ふたりして大笑いされた
それは「田舎饅頭」というのだと
お店の人が教えてくれた

恥かしい思いをして
無理やり名前を押し付けられた
「やぶれ饅頭」ではない
「田舎饅頭」は私の知っている
饅頭とはもう違っていた

だから
今でも私の心の中では
「田舎饅頭」ではなく
「やぶれ饅頭」のまんまで
[次のページ]
戻る   Point(17)