ゆっくりとうつりかわっていく季節/影山影司
大丈夫ですか」と声をかけて抱え起こしたが、顔を見た瞬間に俺は男を放り投げた。
男は俺にそっくりなのだ。髪型、耳の形、服装、体格。全て同じだった。毎朝鏡で見る、俺の像そのままだった。ただ一つ違ったのは、男は表現しにくい悪臭を放っていた。恐る恐る顔に触れると、冷たい。既に死んでから時間が経っていたのだ。ということは、これがいわゆる腐乱臭というものだろうか。人が腐った匂いは、一嗅ぎで嘔吐するほど強力な匂いだと聞く。確かに、今は油断すると胃液が喉を駆け上がりそうだった。
吐いてる時間はない。この死体を、拾わなくてはならないのだ。
俺はまわりを見渡し、誰にも見られていないことを確認するとその死体
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