ゆっくりとうつりかわっていく季節/影山影司
 
死体を家の中へと引き摺り込んだ。

 しばらくどうするべきか考えたが、結局こうして死体を分解している。見たところ腐敗は進んでいないが、皮膚を切る度に中からあの奇妙な匂いと血液が溢れ出る。以前拾わなかった、あの名札のことを思い出す。初めは俺だけしか使っていなかったが、次第に周りも名札を新しいものへと交換するようになっていった。今では職場の半分が、あのピンクの名札を使っているのではないか。
 風呂場の換気扇は唸り声を上げて回り続けている。この奇妙な匂いが、俺の家に染み付くのだけは避けてくれるだろう。
戻る   Point(0)