消えた電池のこと/はるな
な光景だった。たじろいでしまうような。世界はたしかに変化していた。
五月になり、連休をつかって夫の実家へ行った。
高速道路を走るなかで、何台も何台も自衛隊の車とすれちがった。
「ちかくに避難所があるから、物資には困ってない。」という義母。「物資」。そんな言葉が日常的に使われているのだろうか。それをだれも不思議に思わないのだろうか。お米と水と、インスタントラーメンを渡すと、ありがとうありがとうと何度も言われた。
「やっぱり、家がちゃんとあるのに、物資をもらいに行くのは気が引けて。」
夫の家から歩いていけるほどの場所まで津波は来ていた。「あそこはひとのいくところじゃない。」「静かで、もう
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)