消えた電池のこと/はるな
 
なかったのだ。だって揺れていないから。

そして程なくして関東に住むわたし自身の両親と連絡が取れる。わたしにとってはじめての被災者との会話だ。しきりに夫の実家の安否を案じるなか、気丈にふるまう母のかすかな怯えを忘れられない。「何度も揺れるんだ。」「ずっと揺れているみたい。」「そちらは大丈夫なの?」
まるで日本のどこにももう安全な場所など残っていないような口ぶりだった。大丈夫だよ、ほんとうになんともないんだよ、と何度も言うが、「なんともないの?なんとも?」と、信じられない様子。

しばらくして夫の実家とも連絡が取れる。「家は残っている。」「うちは平気さ。」
うちは平気さ。のあとに間があり
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