春の追憶/小川 葉
て、コンビニにカップラーメン買いに、ふらふら懐手しながら、夜の街に出かけた。
コンビニまで行くには、踏切を渡らなければならない。その踏切のあたりに、真夜中ひとごみが見えた。ブルーシートが運ばれていた。みな青白い顔をしていた。警官に聞くと、自殺なのだと言う。酔っ払った若者が、線路を横切ろうとすると、列車が来ますから、と言って、慌てて警官が制止した。みな緊張していた。わたしはあの人だと思った。わたしも青白くなり、カップラーメンは、買わずに帰った。
帰ってから、妻に昼からの出来事を話した。その頃わたしは、わたしの勝手な判断で、故郷の秋田に、妻と息子を連れていくことを決断していたのであるが、正
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