240311/ねことら
もやし、ふくらませ、あなたを、わたしを、だきとめるようとするおこないが、あの日、絶えてしまった祈りを、わずかでも浮かび上がらせることができるなら、わたしは、わたしたちは、言葉を、言葉としてはじめて信じ切り、用いることができるはずだ。
折れた鉄骨、灰色の土砂、冷たいみずと、尖った疲労、わたしたちは、奪われ、奪われたことへの反撃を奪われ、忘却しようとし、忘却することさえ奪われ、いつまでもゼロに戻される。祈り。どの瞬間にも、祈りがあった。祈りだけがあった。
何度も繰り返し陽はのぼる。何度も繰り返し季節はめぐる。いきていくこと。春は芽吹き、雪はとけ、建物が立ち、ひとが増え、ひと
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