文学的なものと哲学的なもの/kaz.
 
そうとする。「私は死んだ」と語る存在をいくらでも考えてしまえるのが哲学であり、それがどんなに突飛な考えであったとしてもありうるのだとする。哲学では、本当のことを言うことはできない、という前提から出発しているために、少しでも本当のことに近づくという永遠の努力のうちに成り立っている。つまり、語ったものが必ずしも解答とは言えないという自明の前提の受け入れ方が、文学的なものと哲学的なものの間では全く異なるのである。文学的なものは新しい疑問を提示することによってその前提を受け入れようとし、哲学は反論としての新しい解答を用意してしまう。誰かが語ったという事実ではなく、誰が語ったのかを知ろうとするのだ。


[次のページ]
戻る   Point(3)